自動車の買い替えと娘の大学進学が相次ぎ、家計が苦しくなった。
五月、軽自動車税の納付通知来る。これまでは登録車（軽自動車より大きい、いわゆる普通のクルマ）だったが、初めて軽自動車にしたのだ。クレジットカードで支払えるという情報もあったが、私の市では手数料負けをする。ローソンで10,800円を支払う。
これまで登録車でもそうしていたように、銀行引き落としの手続きをする。来年からそうなる。
ここまではよかった。
出費が相次ぐ。
大学の前期授業料。267,900円。手数料880円。
大学寮の家賃。11万円。
出張費立替え。9万円。
給湯器交換。23万円。
ひと月で百万円くらいの出費。ぐうの音も出ない。
投資信託を解約し、それが下りてきたか毎日オンラインバンキングで確認する。
「ケイジドウシャゼイ 10,800」
銀行で引き落とされている。なぜですか。
伝票を見る。たしかにローソンで10,800円支払った。銀行に行って開始年を「Ｒ６年」と書いた。それを誰かが間違って今年Ｒ５年からついうっかり引き落としちゃったのであろう。かわいく言っても駄目だ。税金の二重取りだ。タックスマンめ、許せぬ。
会社で「税金を二重取りされました」と休暇をもらう。
いざ市役所へ。ＡＴＭで記帳する。確かに引き落とされている。正しく手続きされ、間違ってお金が搾取されている。負けない戦い。「おらおらなにやっているんだ」という気分（口には出せない）。
受付のお姉さんに「自動車税を二重取りされた可能性があるのですが」と厳かに宣告する。
「軽自動車税ですね」と訂正される。
税務課へ。顛末を説明する。
「昨年まで登録車で銀行引き落としだったので、そのデータが軽自動車に引き継がれた、ということはありますか」
「それはないですね。納めるところが違いますから」
自動車税は都道府県に、軽自動車税は市町村に納める。
待たされる。証拠はあるのだからさっさとお兄さんのポケットの財布から10,800を払ってくれないかな。絶対ありえない妄想をする。
お詫びということで市の名産品でもくれないかな。牛肉。お菓子。うどん。やっぱり牛肉がいいな。
別の部署からお姉さんが呼ばれる。市役所で確認できるデータにはおかしいところはない。
「お調べしますのでお時間をいただいてもいいですか。申し訳ありません」
そうするほかはない。
なにも得られず、再び会社に向かう。しっかりしてくれ、公僕。
その日の午後、電話。先ほどの市役所の女性だ。
「奥様も軽自動車をお持ちですよね」
引き落とされていた10,800円は妻の自動車税だったのだ。
「すぐに調べられず申し訳ありません」
いやわるいのは全面的に私。税金の二重取りだなんてまわりに言っちゃった。心からお詫び申し上げます。しっかりしていない、この僕。
