１７・抽斗

　○○は、机の引出しの奥に忘れていたものだった。

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　給食のパンは、机の引出しの奥に忘れていたものだった。
――腐るよ。

　野菜パンは、机の引出しの奥に忘れていたものだった。
――腐りやすいって！

　青魚は、机の引出しの奥に忘れていたものだった。
――いちばん腐りやすいって！　そもそもなんで机の中に。

　青魚パンは、机の引出しの奥に忘れていたものだった。
――そんな食べ合わせはない。

　備忘録は、机の引出しの奥に忘れていたものだった。
――忘れたときのために備えるから備忘録と言うんだろう。

　忘れ物は、机の引出しの奥に忘れていたものだった。
――具体的に言え。

　輪ゴムは、机の引出しの奥に忘れていたものだった。
――よくありますよね。

　紙は、机の引出しの奥に忘れていたものだった。
――あまり一般的で特徴のないものだと、なんか日本語の文章としておかしい。

　神は、机の引出しの奥に忘れていたものだった。
――そんなモノを忘れてはイケマセーン。

　ははは、机の引出しの奥に忘れていたものだった。
――快活に笑うな。

　机は、机の引出しの奥に忘れていたものだった。
――ん？

　机の引き出しは、机の引出しの奥に忘れていたものだった。
――んん？

　机の引き出しは、机の引出しの奥に忘れていた机の引き出しは、机の引出しの奥に忘れていた机の引き出しは、机の引出しの奥に忘れていた机の引き出しは、机の引出しの奥に忘れていた机の引き出しは、机の引出しの奥に忘れていた机の引き出しは、机の引出しの奥に忘れていた机の引き出しは、机の引出しの奥に忘れていた机の引き出しは、机の引出しの奥に忘れていたものだった。
――リーインカーネーションって、何となく花っぽいですよね。

　象は、机の引出しの奥に忘れていたものだった。
――やあボブ、上品な象をなんて呼ぶか知っているかい？
　　エレガントって言うんだよ。ハッハッハー。

　パトリックの名刺は、机の引出しの奥に忘れていたものだった。
――ぐすん。

　英語は、机の引出しの奥に忘れていたものだった。
――xxx is what I forgot in the drawer of the desk.

　古いアルバムは、机の引出しの奥に忘れていたものだった。
――思い出がいっぱい。

　漢字ドリルは、机の引出しの奥に忘れていたものだった。
――いいから格好付けてないで早く取りに行ってこい。

　良心は、机の引出しの奥に忘れていたものだった。
――何だってそんな大切な物を事務的な場所に。

　○○は、机の引出しの奥に忘れていたものだった。とっぴんぱらりのぷう。
――金平糖はどうした。

　金平糖は、机の引出しの奥に忘れていたものだった。とっぴんぱらりのぷう。
――もう終わりかよ。

　机の引出しの鍵が開きません。
――早く開けろ。

　机の引き出しの鍵は、机の引出しの奥に忘れていたものだった。
――どうやって閉めたんだ。

　これは、机の引出しの奥に忘れていたものだった。
――だからこれって何だ。

　あれは、机の引出しの奥に忘れていたものだった。
――だからなんだと聞いている。

　それは、机の引出しの奥に忘れていたものだった。
――いい加減にしなさい。

　どれが、机の引出しの奥に忘れていたものなんですか？　どれ？　どれどれ？　どれ？
――お前はハテナマンか。

　どれが？　机の？　引出しの？　奥に？　忘れていた？　ものだった？
――今そんなしゃべり方をしたら知能を疑われるぞ。

　何が、机の引出しの奥に忘れていたものだった？
――若さと、初々しさと、羞恥心と、知性と、みんなで雑文を競って書いていたころの思い出かな。

　とっぴんぱらりのぷう。